司法通訳の現場から見える、日本の刑事司法の課題

ー老害からの老賢ー
【第1部①捜査通訳・法廷通訳・弁護通訳の違い】

司法通訳といっても、役割は一つではありません。

捜査通訳
警察・検察の取調べで、質問と供述を通訳する。

法廷通訳
裁判所で、裁判官・検察官・弁護人・証人・被告人の発言を通訳する。

弁護通訳
弁護士と本人の接見や打合せで、言い分や弁護方針を伝える。

同じ「通訳」でも、場面も立場も違います。

特に捜査段階の通訳は、供述調書に影響するため非常に重い。
弁護通訳が不十分なら、本人の言い分が弁護士に正確に届かない。

「通訳がいたから安心」ではなく、
どの場面で、どの立場の通訳がいたのか。

ここを見なければ、外国人事件の公正さは語れません。


【第1部② 通訳人の拘束時間と精神的負担】

司法通訳は、ただ言葉を訳す仕事ではありません。

警察署での取調べ。
検察での聴取。
弁護士との接見。
裁判所での公判。

長時間拘束されることもあります。

しかも扱う内容は、窃盗、傷害、薬物、詐欺、DV、入管法違反など、精神的に重い事件も少なくありません。

通訳人は感情を入れず、正確に訳さなければならない。
一つの言葉の違いが、供述や裁判の印象を変えることもある。

それだけ重い仕事なのに、通訳人の負担は社会であまり見えていません。

司法通訳を増やすには、語学力だけでなく、
報酬、研修、拘束時間、安全、精神的負担への配慮が必要です。


【第1部③ 通訳人の身の安全は守られているのか】

司法通訳には、身の安全という問題があります。

刑事事件では、通訳人は被疑者や被告人の供述、事件の詳細、関係者の名前など、非常に機微な情報に触れます。

特に少数言語では、同じ国や地域のコミュニティ内で、
「誰が通訳したのか」
が推測されやすい場合があります。

通訳人は警察側の味方でも、被疑者側の味方でもありません。
本来は中立の立場で、言葉を正確に伝える存在です。

しかし関係者から誤解されれば、嫌がらせや報復の不安を感じることもある。

通訳人が守られなければ、司法通訳制度は成り立ちません。


【第1部④少数言語の通訳人不足】

外国人事件で深刻なのが、少数言語の通訳人不足です。

日本で暮らす外国人は多様化しています。

ベトナム語、ネパール語、ミャンマー語、シンハラ語、クメール語、ベンガル語、インドネシア語など、必要な言語は広がっています。

しかし、外国語ができる人と、司法通訳ができる人は同じではありません。

黙秘権。
供述調書。
否認。
自白。
起訴・不起訴。
保釈。
執行猶予。

これらを正確に伝えるには、法律用語と刑事手続きへの理解が必要です。

「通訳が必要」と分かっていても、適切な通訳人がすぐに見つからない。
これが現場の大きな問題です。

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